童夢がルマン24時間レース用に開発したマシンS102。
4つのクラスが混走する最高峰クラス“LMP1”仕様である。
そのドライバーの一人としてステアリングを握ることとなった伊藤は昨年末からこのS102の開発テストに参加し、予選アタッカー、決勝スタートなどの重役を任されることとなった。
3人のドライバーラインナップでチームメイトの立川選手、片岡選手同様伊藤にとっても初参戦となるルマン24Hレース。
普段は公道として使用しているため、限られた時間しか走行することのできないサルテサーキットだが、伊藤は初参戦とは思えぬ走りで予選8位を獲得した。
もちろん目指すところはポールポジションであったが、近年ヨーロッパの自動車メーカーで開発が進んでいるディーゼルエンジンに対して非常に有利なレギュレーションとなっているため、上位グリッドの6台は必然的にディーゼルエンジンを積むプジョー3台、アウディ3台に占領されてしまう。
またガソリンエンジン車で6位につけたローラアストンマーティンも市販車ベースエンジンを使用していることから規制がゆるい。
そのためS102が得た8番グリッドは実質ガソリンエンジン車のトップと言えるだろう。
決勝は14(土)の15時にスタート。
スタートを無難に決めた伊藤は前を行くNo.10ローラアストンマーティンを追う。
双方同じようなペースで順位をキープしたまま1回目のピットストップ。
給油、オイル補給だけで伊藤が再度コース復帰。ここでNo.10を逆転し一つポジションを上げた。
本来1セットのタイヤで3スティントをこなすが、S102はテストで十分な距離を稼ぐことが出来なかったため、2スティントを終えた時点で念のためタイヤ交換とドライバー交代も同時に行った。
その後は立川→片岡→伊藤と順調に3スティントずつを消化し深夜に突入。
ところが立川選手がドライブ中にオイル補給をするマシン側の部品にトラブルが発生し、1時間程の修復作業を余儀なくされた。
又、伊藤のドライブ中にブレーキトラブルが発生し、ピットまで戻り修復作業を終えた後、再度伊藤がコース復帰。
この時点で順位は24位あたりまでドロップしたが、夜中の雨という難しいコンディションの中、伊藤は好タイムで走行した。
しかし、約19時間経過した頃、雨も弱まりコースが回復傾向にあったため、カットスリックタイヤでコースに出た伊藤だったが、コース一部の雨が降っている場所でスピンしマシンを破損。
何とかチェッカーを受けるべくメカニックが懸命な作業で修復し、ゴール30分前にコース復帰することに成功。
33位と順位を落としたが、なんとかチェッカーを受けることができた。
まずは童夢S102のルマン24時間参戦という大きなプロジェクトに加わることができ光栄です。
ルマン24時間レースは公道とサーキットを組み合わせた1周13kmもある特殊なコースで、天候も変わりやすく非常に難しいレースでした。
順位的には残念な結果となりましたが、所々でS102の速さをアピールすることが出来たと思います。
難しいレースだけにやり甲斐は大きく、ルマンで勝つにはやるべき事がたくさんありますが、来年以降も是非チャレンジしたいと思います。
このプロジェクトに携わった関係者の皆さん、応援してくれた皆さん、本当にありがとうございました。