SuperGT/ルマン24
レーシングドライバー

レーシングドライバー伊藤大輔オフィシャルサイト

ROAD to LEMANS「大輔のルマン参戦記」

vol.12:ゴールに向けて

夜が明け午前10時頃に4回目の「お仕事」。雨脚が弱まりタイヤの選択が難しい状況だったが、念のため通常のレインタイヤでコースイン。しかし思ったよりコースが乾いていたため他チームより比較的早めの段階でカットスリックタイヤに履き替えることに。しかし部分的に濡れている箇所がまだ多く、何度か挙動を乱すこともあったけど、「マシンをねじ伏せて他のマシンより速く走るんだ!」って感じで気持ちを高ぶらせマシンと格闘していた。しかし第2シケインでまた雨が降っていた。慎重に行かなくてはと思った瞬間……「ガシャン」。滑ってマシンをぶつけてしまった。「滑りやすい状態で少し調子に乗りすぎたかも……(泣)」。マシントラブルでぶつかる場合、身体は痛いけど心は平気。自分のミスでぶつかる場合は身体より心が痛い……トホホ。

何とかピットまでたどり着くとスタッフが一斉に作業に取り掛かる。残りは4時間。最低でもラスト30分くらいにはコース復帰しないと周回数が足りず完走扱いにならない。でもスタッフの頑張りでちょうどチェッカー30分前にピットを離れることができた。ラスト1周は旗を振るオフィシャルがコースまで出てきて皆を讃えてくれる。その時1位を走っている2号車アウディが目の前に。既にスローダウンしウイニングランをしていたのだ。僕はその2号車を抜いていいのか悪いのか少し迷ってしまった。「このまま2号車のうしろを走ればかなりTVに映るぞ! スタート直後に良いポジションで1コーナーに侵入できなかった分をここで取り返せるかも!」な〜んてバカげたことを考えてしまったので、一瞬2号車を抜くのをためらい、うしろにさがった後抜いていくというちょっと挙動不審な場面がずっとモニターに映っていたらしい(笑)。

ともあれルマン24時間を無事ゴールできた喜び、クラッシュした悔しさ、スタッフへの感謝、いろんな想いを胸にチェッカーを受けた。でも正直なところ完走できた喜びなんか無い。レースに出る以上、速くて、勝ってナンボの世界。レギュレーションの不利はあったが、アウディやプジョーが持つ速さと強さにはかなわなかったし、我々のマシン、ドライバー、チーム、全てがノーミス&ノートラブルというレースにはならなかった。一番の原因は“時間の無さ”だったと思うが、この経験を基に来年もこの場所に居たい。レースを終え3週間経った今は素直にそう思える。


写真

写真


←Back